
1. はじめに
愛犬に「リンゴ」をおすそ分けしても大丈夫?
そんな疑問を持つ飼い主さんも多いのではないでしょうか。
昔から「1日に1個のリンゴで医者いらず」と言われるほどリンゴは栄養豊富な果物です。
実はリンゴは犬が食べても基本的に安全な果物で、人が大好きなリンゴをワンちゃんと一緒に楽しむこともできます。
ただし、人には無害でも犬にとって危険になり得る部分(種など)があるのも事実です。
正しい知識を持って与えれば、リンゴは愛犬も喜ぶヘルシーなおやつになります。
本記事では、リンゴを犬に与えるメリットや栄養効果、適切な量と頻度、安全な与え方と注意すべきNG事項、さらにリンゴの品種ごとの違いやアレルギー・中毒のリスクまで、わかりやすく解説します。
愛犬の健康的なおやつ選びにぜひお役立てください。
2. 犬にりんごを与えるメリット
リンゴには犬の健康に役立つ栄養素がたっぷり含まれています。
ここでは愛犬にリンゴを与える主なメリットをご紹介します。
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整腸作用と免疫力アップ:リンゴに豊富な水溶性食物繊維「ペクチン」が腸内環境を整えます。
ペクチンには腸内の善玉菌を増やして悪玉菌を減らす働きがあり、便通を改善してくれるため、下痢や便秘の解消に役立ちます。
腸内環境が良くなると免疫力の向上も期待できます。
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ビタミン・ミネラルによる健康維持:リンゴはビタミンA・C・E・B群やカリウムなど、犬の体調維持に有用なビタミン類やミネラルを幅広く含んでいます。
微量ながらこれらを補給できることで、愛犬の皮膚や被毛の健康維持や疲労回復、老化防止などに貢献します。
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ポリフェノールによる抗酸化作用:リンゴにはポリフェノールが含まれており、特に皮の部分に多く含まれます。
ポリフェノールには強力な抗酸化作用があり、細胞の酸化ダメージを抑えることで病気予防やアンチエイジングに役立ちます。
皮ごと与えればポリフェノールも効率よく摂取できます。
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疲労回復をサポート:リンゴの爽やかな酸味成分である「リンゴ酸」や「クエン酸」には、体内に蓄積した乳酸を分解して疲労回復を促す作用があります。
お散歩や運動の後に少量のリンゴを与えることで、愛犬の疲れを癒すサポートになるでしょう。
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低カロリーでヘルシーなおやつ:リンゴは約80%が水分でできており、脂質がほとんどないため低カロリーです。
さらに食物繊維が多く満腹感を得やすいので、肥満気味の犬のダイエット中のおやつにも適しています。
甘みが強く香りも良いため、愛犬のごほうびおやつとしてぴったりです。
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歯のケア効果(軽度):シャリシャリとしたリンゴを噛むことで、歯の表面の汚れを多少落とす効果が期待できます。
リンゴの皮は歯に挟まりやすいので注意が必要ですが、硬めの果肉を噛むことで歯垢除去の一助になるでしょう。
ただしデンタルケアの代用にはならないため、日々の歯磨きは別途行ってください。
3. 与えてもいい量と頻度の目安
リンゴは体に良いとはいえ、与えすぎは禁物です。
おやつは1日の総摂取カロリーの1割以内に収めるのが基本で、リンゴも例外ではありません。
与える量は犬の大きさや体調によって調節しましょう。
体重5kgの小型犬で1日約30〜60g、15kgの中型犬で約80〜150g、30kg以上の大型犬で約180〜300gが適量とされています。
もちろん個体差や普段の食事量によっても変わるため、あくまで目安と考えてください。
また、おやつを与えすぎると主食のドッグフードを食べなくなる恐れもあります。
リンゴはあくまで補助的なおやつであり、主食の邪魔をしない範囲で与えることが大切です。
リンゴ1個には約19g前後の糖分が含まれるため、一度に丸ごと1個を与えるのは控えましょう。
どんなに体に良い食べ物でも、与えすぎれば腹痛や下痢の原因になります。
リンゴ1〜2切れでも犬にとっては十分満足できる量です。
愛犬が欲しがるからといって、欲しがるままに与えないようにしましょう。
頻度としては、毎日のように与える必要はありません。
基本はおやつとして時々与えるもので、週に1〜3回程度でも十分でしょう。
他のおやつとのバランスを見ながら、与えすぎにならない頻度に調整してください。
また、肥満気味の犬や持病がある犬、シニア犬などの場合は、リンゴの与え方について念のため獣医師に相談すると安心です。
なお、子犬にリンゴを与える場合も可能ですが、初めて食べるときはごく少量から始め、体調に異変がないか確認しましょう。
皮膚のかゆみや嘔吐・下痢などの症状が出た場合は、すぐに中止して獣医師に相談してください。
問題がなければ、少しずつ量を増やして慣れさせましょう。
4. 安全な与え方とNGな与え方
≪安全に与えるポイント≫
- よく洗う:リンゴの皮には農薬や汚れが付着している場合があります。与える前に水でしっかり洗いましょう。可能であれば無農薬やオーガニックのリンゴを選ぶと安心です。
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種と芯を除く:リンゴの種には微量ですがシアン化合物(青酸)という有毒な物質が含まれています。
また、硬い芯や茎は消化されず喉に詰まる恐れがあります。
包丁で芯と種は必ず取り除いてから与えてください。
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小さく切る:大きな塊のままでは丸呑みして窒息する危険があります。
犬のサイズに合わせ、薄いくし切りや1〜2cm角程度の一口大にカットしましょう。
特に小型犬やシニア犬にはできるだけ小さく刻んであげると安心です。
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必要なら皮を剥く:リンゴの皮には栄養が含まれますが、消化に時間がかかったり歯に挟まることがあります。
農薬が心配な場合や、愛犬のお腹が弱い場合は無理に皮を与えず、剥いて中身だけ与えましょう。
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与える時は見守る:愛犬がリンゴをしっかり噛んで食べているか確認しましょう。
初めてリンゴをあげる際は、食べ方や体調の変化を注意深く観察してください。
お腹が緩くなる場合もあるため、様子を見ながら少しずつ与えることが大切です。
≪NGな与え方・注意点≫
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種・芯を与えない:種には毒性があり芯は危険です。絶対に種や芯ごと与えないでください。
万が一誤って飲み込んだ場合は、早急に獣医師に相談しましょう。
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大きなまま与えない:丸ごと1個や大きな塊のままでは喉に詰まる事故につながります。
必ず小さく切ってから与えましょう。
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与えすぎに注意:リンゴが好きだからといって大量に与えるのは避けてください。
糖分の過剰摂取によって下痢など体調不良を起こしたり、カロリーオーバーで肥満の原因になります。
適量を守りましょう。
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甘い加工品はNG:砂糖たっぷりのリンゴジュースやジャム、アップルパイなど、人間向けに甘く調理されたものは与えないでください。
糖分や脂肪が多く、レーズンや香辛料など犬に有害な材料が含まれる場合もあります。リンゴそのものを与えるようにしましょう。
5. 品種ごとの違いとおすすめのりんご
リンゴには国内外で数多くの品種があり、甘みや酸味、固さに違いがあります。
一般的に犬には酸味の少ない甘いリンゴが適しており、酸っぱい品種は避けたほうが無難です。
酸味が強いリンゴは犬が渋い顔をして食べなかったり、胃腸に負担をかける恐れがあります。
反対に甘みの強いリンゴは犬が好んで食べてくれやすく、苦味や酸味が苦手な犬でも喜んでくれます。
いくつか犬におすすめのリンゴ品種を挙げてみましょう。
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ふじ(Fuji):国内で最もポピュラーなリンゴ。
甘みが強くジューシーで香りも良いため、多くの犬が好む味です。
皮が比較的薄くパリッと噛み切りやすいのも特長です。完熟させたり「サンふじ」と呼ばれる無袋栽培のふじはさらに甘みが増します。 -
ゴールデン・デリシャス:海外原産の黄色いリンゴですが、日本でも一部生産されています。
非常に甘く酸味が少ない品種で、果肉が柔らかいため犬が食べやすく消化もしやすいです。 -
王林(おうりん):青リンゴ系の品種ですが、香りが良く甘みの強いリンゴです。
果肉もやや柔らかめで多汁質のため、シャリシャリとした食感を楽しみながら美味しく食べられます。
逆に、紅玉(こうぎょく)やグラニー・スミスのような酸味の強い品種は、犬によっては好まなかったりお腹を壊す可能性もあるので注意しましょう。
酸味のある品種を与える場合は、ごく少量に留めて様子を見ることをおすすめします。
また、皮が硬かったり果肉が非常に硬い品種も犬には食べにくい場合があります。
比較的皮が薄く柔らかめの品種(例:ふじやゴールデン・デリシャスなど)を選ぶと安心です。
リンゴはよく熟すほど甘みが増して柔らかくなりますので、愛犬には完熟したものを選ぶと良いでしょう。
無理に珍しい品種を選ぶ必要はなく、スーパーで手に入る甘いリンゴで十分です。
6. アレルギー・中毒の危険性と注意点
リンゴに対するアレルギー
リンゴは犬にとって比較的アレルギーを起こしにくい食品ですが、可能性がゼロではありません。
アレルギーは体内の免疫が特定のタンパク質に過剰反応することで起こりますが、リンゴにもごく少量ながらタンパク質が含まれているため、アレルゲンとなり得ます。
実際にリンゴを食べて皮膚のかゆみや嘔吐・下痢などの症状を示す犬もまれにいます。
初めてリンゴを与えるときは少量に留め、愛犬の様子に注意しましょう。
もし上記のような症状が見られた場合は、それ以上与えるのは避け、獣医師に相談してください。
種による中毒リスク
繰り返しになりますが、リンゴの種や芯には犬にとって有害な物質が含まれています。
種に含まれるシアン化合物は体内で代謝されると有毒なシアン(青酸)となり、十分な量を摂取すると中毒症状(嘔吐、過度のよだれ、ふらつき、痙攣など)を引き起こす可能性があります。
芯や茎も消化管を塞ぐ危険があります。幸い、リンゴの果肉自体には犬に有害な成分は含まれていません。
ですから、きちんと種と芯を除去しさえすればリンゴは安全に与えられる果物です。
万が一、種や芯を飲み込んでしまった場合は、愛犬の様子を注意深く観察し、少しでも異変があれば速やかに動物病院に連絡してください。
持病がある犬への注意
リンゴは基本的に健康な犬であれば適量を守る限り安全ですが、何らかの持病がある場合には注意が必要です。
例えば、糖尿病の犬にとって果物の糖分は血糖値に影響します。
与えていけないわけではありませんが、量や頻度について必ず獣医師と相談してください。
また、腎臓病や心臓病でカリウム制限が必要な場合、リンゴに含まれるカリウムが負担になる可能性があります。
シニア犬や特定の疾患を抱える犬にリンゴを与える際は、事前に主治医に相談し、与える場合もごく少量に留めるほうが安心です。
なお、リンゴは犬に有害とされるブドウやレーズンとは異なり、適切に与えれば安全な果物です。
過度に心配しすぎる必要はありませんが、以上の点に気を付けて賢く取り入れてあげましょう。
7. まとめ
シャキッとした歯ごたえと自然な甘みが魅力のリンゴは、工夫次第で犬も安心して楽しめるヘルシーなおやつになります。
ポイントをおさらいすると、まずリンゴ自体は犬にとって有害な果物ではなく、ビタミンや食物繊維などを含むメリットの多い食品です。
ただし、与えすぎないことと種・芯を取り除くことが大前提。
適量を守って小さくカットし、皮はよく洗ってから与えれば、愛犬もおいしく安全にリンゴを味わえます(品種は甘みの強いものだとより喜んでくれるでしょう)。
リンゴは多くの犬にとって香りや甘みが魅力的で、大好きなおやつになるはずです。
普段のおやつにリンゴを取り入れることで、愛犬の食べる楽しみが増え、栄養補給や水分補給にも役立ちます。
ぜひ今回ご紹介したポイントを参考に、愛犬との楽しいおやつタイムに旬のリンゴを活用してみてください。
【参考文献】
Can Dogs Eat Apples?
Fruits and Vegetables Dogs Can or Can’t Eat
Plants That Are Poisonous to Dogs