inu-tsumekamu-1

犬が爪を噛む理由7つとやめ方

1. はじめに

inu-tsumekamu-2

愛犬が自分の爪を噛むのはなぜでしょうか?この記事では、犬が爪を噛むと考えられる7つの原因別に、そのやめさせ方と動物病院を受診する目安を解説します。

今すぐできる対処法や、やってはいけないNG対応例もチェックしましょう。

また、原因を見極めるための観察ポイントチェックリストや、季節・年齢ごとの対策のコツもまとめました。

爪を噛むことで起こる二次被害を防ぎ、安心してケアできるよう一緒に取り組んでいきましょう。

2. 早期介入の判断基準と観察法

inu-tsumekamu-3

2.1 「普通」と「要注意」の境目

犬が自分の爪を少しカミカミする姿は珍しくありません。遊びの延長だったり、爪の先が気になって一時的に噛んでいるだけなら心配ない場合もあります。でも、次のような様子が見られるときは早めの対処が必要です。

  • 同じ指(同じ爪)ばかりを繰り返し噛む
  • いったん止めてもすぐ再開する、あるいは長時間続けて噛む(例:1日に何度も繰り返す、1回が5分以上続く)
  • 爪が割れている、出血している、赤く腫れて痛そうにしている、歩き方がおかしい
  • 皮膚や指の間をなめ続けて、その部分の毛が薄くなったり湿っていたり臭ったりする
  • 季節の変わり目や散歩後など、決まったタイミングで必ず症状が悪化する

こうした様子を放置してはいけないのは、二次被害が重なってどんどん悪化する可能性があるからです。例えば、爪が割れたり内出血したままにすると細菌感染を起こしやすくなりますし、皮膚がただれてしまうと「ホットスポット(急性湿性皮膚炎)」に進行してしまうこともあります。また、「不快だから噛む→噛んだらスッキリする」という学習を何度も繰り返すうちにクセになってしまう点にも注意が必要です。

判断するときのポイントは「頻度」「強さ」「同じ部位か」の3つです。軽く爪をカミカミする程度で、それが時々出るだけならまずは様子観察とおうちケアで十分でしょう。

でも、傷ができていたり、出血していたり、足を引きずっていたり(跛行〈はこう〉)、ものすごく痒がっている様子があれば、その日のうちから遅くとも48時間以内に動物病院を受診してください。

2.2 観察チェックリスト(原因特定の近道)

愛犬が爪を噛む原因を絞り込むには、噛み始める直前・直後やそのときの周囲の状況を記録するのが近道です。次のポイントを2〜3日分メモしてみましょう。

  • いつ?(時間帯・天気・季節):例)雨の日が続いたときや空気が乾燥する季節に悪化していないか、夕方に集中していないかなど。
  • どこで?(場所):例)散歩から帰った直後、サークルやケージの中にいるとき、家族が留守にしている間、来客があったときなど。
  • 何の後に?(行動):例)散歩・シャンプー・爪切り・ブラッシングの後や、留守番の後など。
  • どの指を?(左右・前後肢・特定の爪):常に同じ爪を噛んでいるか、前足だけか、後ろ足もかなど。
  • どれくらい?(頻度・持続時間):1日に何回ぐらい噛むか、1回に何分くらい続けて噛むかなど。
  • 体のサインは?(痒み・赤み・ニオイ・ぺろぺろ・痛がる様子):噛んでいる指に痒がる仕草や赤みはあるか、嫌な臭いがしないか、足をしきりになめていないか、触ると痛がらないかなど。
  • 環境は?(運動量・遊びの量・留守番時間・騒音・気温/湿度):最近の運動や遊びの量は足りているか、留守番の時間が長くなかったか、周囲で大きな物音やストレス要因はないか、気温や湿度の変化はあったかなど。

この記録を見返せば、原因が行動面の要因(退屈・不安・クセ など)なのか身体面の要因(爪・皮膚のトラブルやケガ、アレルギー など)なのかだいたい見当がつきます。

例えば「雨で散歩に行けない日が続いた週に悪化した」なら運動不足が原因かもしれませんし、「散歩の後に毎回悪化する」なら草むらや花粉による刺激、あるいは小さな外傷の可能性があります。

「夜間や留守中に集中して噛んでいる」場合は不安や退屈さが疑われます。

このように観察→仮説→対処の順で進めるとムダな手間が減り、短期間で改善しやすくなります。

3. 犬が爪を噛む原因

inu-tsumekamu-4

3.1 行動要因(退屈・ストレス・緊張・噛み癖)

まず、犬の行動面に原因があるケースについてです。代表的なのは「退屈(暇つぶし)」「不安・ストレス」「緊張」「噛み癖」といったものです。

例えば、雨続きや猛暑でお散歩に行けない日が続く時期、引っ越しや模様替えで環境が変わったとき、家族が外出して留守にする時間が増えたときなど、生活環境の変化によってこういった行動要因が引き金になりやすくなります。

行動面の原因に対処する基本は、次の3つです。

  • 運動・遊びを適量に
  • 朝と夕方にそれぞれ15〜30分の散歩に加えて、5〜10分ほど引っ張りっこやボール遊びをしましょう。
  • 天気が悪くてお散歩に行けない日は、代わりに室内でノーズワーク(おやつ探しゲーム)やフードパズル、タオルにおやつを隠す嗅覚ゲームなどを取り入れて発散させます。
  • 代替行動を教える
  • 愛犬が爪を噛みそうになった瞬間に、噛んでもいいおもちゃ(ロープのおもちゃやコングなど)をすぐ差し出し、そちらを噛んだら大げさに褒めてあげましょう。噛む対象をおもちゃに置き換えるクセ付けをします。
  • また、「マット」「待て」などのコマンドで、落ち着ける場所と行動をセットで教えておくのも有効です。短い時間の練習を高頻度で繰り返すのがコツです。
  • 予測して先回り介入
  • お留守番をさせる前には、知育玩具(フードが出てくるおもちゃ)にフードを詰めて与えておき、退屈しのぎを用意しておきます。
  • インターホンなど特定の音が苦手な子には、その音を録音したものを小さい音量から聞かせて、段階的に慣れさせましょ
  • 夕方になると爪噛みがひどくなる子は、悪化する前の夕方前に散歩や遊びで十分に発散させておきます。

飼い主さんが「こら!やめなさい!」と叱るだけでは、ワンちゃんの緊張が増してしまい逆効果になりがちです。

3.2 身体要因(爪・皮膚・アレルギー・ケガ)

身体面に原因がある場合(痛みや痒みなどが原因のケース)は放っておいてはいけません。適切なお手入れと早めの受診を組み合わせて、再発を防ぎましょう。

身体要因として考えられるものは次のとおりです。

・爪が伸びすぎている、爪が割れている、爪にささくれができている、狼爪(ろうそう)が引っかかっている

・爪と爪の間に食べかすや汚れが挟まっていて臭いが気になる

・皮膚炎やアレルギー(花粉、ダニ、食物など)による痒みがある

・外傷がある(とげ・小石が刺さっている、擦り傷になっている)、肉球がひび割れている

・爪の病気(爪床炎、巻き爪)や細菌・真菌の感染症にかかっている

・関節に痛みがある、または体重が増えた影響で前足ばかり気にして舐めてしまうケース

自宅でできる基本ケアとしては、以下のようなものがあります。

  • 爪切り:月に1〜2回が目安です。歩いたときに爪が床に当たってカチカチ音がする前に切りましょう。爪の中の血管(クイック)を避けるため、一度に1〜2mm程度ずつ少しずつカットします。爪の色が黒い子はヤスリも併用したほうが安全です。
  • 足洗い・乾燥:散歩から帰ったら足先をぬるま湯できれいに洗い、指の間まで優しくしっかり乾かします。濡れたまま放置すると細菌が繁殖しやすくなるので注意しましょう。
  • 被毛ケア:足指の間の毛が長い犬種(プードルなど)は毛を短めに整え、ゴミが絡まないようにしておきます。
  • 季節対策:花粉が多い日は草むらへの散歩は避けましょう。室内では空気清浄機(HEPAフィルター付き)を使ったり、こまめに掃除したりして室内のアレルゲン(花粉やホコリなど)を減らします。
  • 保湿:空気が乾燥する季節には、肉球用の保湿バームを薄く塗って肉球のひび割れを予防しましょう。

以下のようなサインがあれば、家庭で様子を見るより早めに獣医さんに診てもらうことを優先してください。

出血している、患部が真っ赤に腫れて熱を持っている、嫌なニオイや膿が出ている、触ると激しく痛がる、足を地面につけず引きずっている、噛み続ける部位がいつも同じである、症状が1〜2週間以上長引いている――こういった場合は当日〜翌日中に病院へ行きましょう。

原因への治療と生活環境の調整を同時に進めていくことで、再発をぐっと減らすことができます。

4. 今すぐできる対処とNG例

inu-tsumekamu-5

4.1 今日からできる即効策10選

小さなことから始めて少しずつ積み上げていきましょう。

安全で即効性があり、続けやすい対策を重視します。

1、散歩を10分延長してみましょう。あるいは、坂道をコースに入れたり、匂い嗅ぎ(クンクン)をたっぷりさせてあげられる散歩コースに変更してみるのもおすすめです。

2、室内でノーズワーク(おやつ探しゲーム)を5分間やってみましょう。(例: フードを家の中の3か所に隠して探させる)

3、知育玩具(フードパズルなど)に夕ご飯の一部を詰めて与えましょう。食べきるのに時間がかかるタイプのおもちゃを使うと効果的です。

4、愛犬が自分の爪を噛み始めたら、すぐ**「噛んでもいいおもちゃ」**を差し出し、それを噛んだら思いっきり褒めてあげましょう。

5、日々の爪先チェックを習慣に。もし爪先にささくれ(欠けた部分)があれば、ヤスリで優しく滑らかに整えてあげます。

6、散歩後の足ケア:足を洗った後、指の間までしっかり乾かしましょう。

7、空気が乾燥する季節には、肉球用バームを肉球に薄く塗って保湿してあげます。(塗っても滑りにくいペット用製品を使いましょう)

8、苦手な音の克服トレーニング:怖がる音がある場合、その音を録音したものを極めて小さい音量から流し、1回1分程度を1日2回ほど練習します。徐々に音量や時間を上げて慣れさせていきましょう。

9、夕方に悪化する子への先回り策:夕方になると症状が悪くなる子は、夕方になる前に遊びやノーズワークで十分に発散させておきます。

10、一時的な保護:犬用靴下やエリザベスカラーを使って、「物理的に噛めない時間」を作る方法もあります。

※犬用靴下や包帯を使う場合は、まずは短時間から始めて様子を見てください。もしそれらを嫌がってイライラが強まるようならすぐ中止し、別の対策を優先しましょう。

他にもちょっとしたコツがあります。

・爪切りのコツ:爪を明るい光に透かして中の血管(クイック)の位置を確認し、先端を1〜2mmずつ少しずつカットしましょう。深爪を防ぎ、安全に爪切りするための工夫です。

・おやつの与え方:一回にあげるおやつの量をごく少量にし、その代わり回数を増やすようにします。ただし、一日の総カロリーが増えすぎないよう調整して太り過ぎを防ぎましょう。

・振り返り:週に1回は観察記録を見直し、うまく効果が出た対策をメモに残しておきましょう。継続することで対策の精度が上がります。

4.2 やってはいけないこと

ポイントとして、強く叱ることや長時間我慢させること、自己流の強い刺激を与えることは逆効果になります。

以下のような対応は避けましょう。

頭ごなしに叱る・マズル(口先)を掴む・手足を強く押さえつける→ 不安やストレスが増して逆効果です。人の見ていないところで隠れて爪を噛むようになったり、かえって噛む行動がエスカレートする恐れがあります。

・深爪になるほど雑に爪を切る→ 痛みや出血を伴い、「爪切り=嫌なもの」と学習してしまいます。その結果、次からのケアがますます困難になります。

洗った足を濡れたまま・蒸れたまま放置する→ 足先が常に湿っている状態だと、細菌や真菌(カビ)が繁殖しやすくなってしまいます。必ず足の先までしっかり乾かしましょう。

人間用の消毒液や薬を安易に使う→ 成分が動物には刺激が強すぎたり、中毒になったりする危険があります。必ず動物用の製品か、獣医師の指示したものを使ってください。

「そのうち治るだろう」と様子を見続ける→ 放置すると傷が悪化して感染を招き、慢性化するという負のループに陥る可能性があります。

対策に迷ったら、「安全第一」「愛犬の落ち着きを優先」「できることから小さく始めて継続」という3つの原則に立ち返りましょう。

5. 受診の判断は?

inu-tsumekamu-6

5.1 受診の判断

出血・腫れ・悪臭・痛み・歩行異常・同じ部位ばかり——こうした症状が見られたら迷わず受診しましょう。

次のような場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。

・出血している、膿が出ている、患部が赤く腫れて熱を帯びている、嫌なニオイがする

・触ると激しく嫌がる、足を地面に着けず引きずっている(跛行する)

・爪が割れたり折れたりしている、爪の色が変だったり一部が欠けた状態が続いている

・同じ爪や同じ足の同じ場所ばかりを執拗に噛み続けている(目安: 1〜2週間以上)

・季節が変わるたびに症状が悪化し、家庭でのケアでは改善しない

・全身に強い痒みがある、または耳を痒がる・皮膚病の症状が同時に見られる

・子犬や老犬、あるいは皮膚・免疫・内分泌の持病がある子で、症状の進行が特に早い

6. 予防とケース別のコツ(子犬・成犬・老犬/夏・冬)

inu-tsumekamu-7

6.1 予防のためのルーティン

地道な小さな積み重ねこそが最大の予防策です。毎日のケアを習慣化することが、愛犬の爪噛み予防の勝ち筋になります。

以下は日頃からできる予防ケアの目安です。

:月に1〜2回は爪を切り、週に1回はヤスリがけをしましょう。歩いたときに爪が床に当たって音がし始めたら、早めにケアします。

:散歩の後は必ず足を洗ってしっかり乾かします。足指の間の毛は常に短めに整えておきましょう。

皮膚:週に1回は全身のボディチェックを行います(赤み、湿り気、臭いがないか確認)。季節の変わり目にはチェック頻度を増やしましょう。

運動:毎日合計30〜60分程度の運動(散歩や遊び)を心がけます。天候不良で散歩に行けない日は、ノーズワークや知育玩具で散歩の代わりになる遊びを取り入れましょう。

環境:寝床はいつも清潔で乾燥した状態に保ちます。空気清浄機を使ったり、こまめに掃除したりして室内のアレルゲンを減らしましょう。

:生活のリズム(食事・散歩・睡眠など)をできるだけ一定に保ちます。留守番の前には運動や遊びで充分に発散させておき、ストレスを溜めない工夫をしましょう。

6.2 年齢・季節別のポイント

愛犬の年齢や季節に合わせた対策をとることで、予防の成功率が上がります。

子犬(パピー):何でも噛んでみたい欲求が特に強い時期です。噛んでもいいおもちゃに噛む欲求を向けさせる習慣を徹底しましょう。爪や足先を触られることに慣れさせるチャンスでもあります。おやつを使ってごく短い時間だけ爪や足を触る練習を毎日の日課にしましょう。(将来のお手入れが格段に楽になります)

成犬(アダルト):毎日の生活リズムを整えることで問題行動の改善が進みやすい時期です。ときどき散歩コースを変えたりノーズワークを取り入れたりして、マンネリを防ぎましょう。飼い主さんが仕事や子育てで忙しい日は、1回5分の運動を1日3回に分けるなど、短時間でも小まめに体を動かす機会を作りましょう。

老犬(シニア):若い頃より関節や皮膚がデリケートになっているため、その子に合わせた配慮が必要です。床に滑り止めマットを敷く、段差にスロープを付ける、皮膚が乾燥しやすければ優しく保湿する、といった環境調整をしてあげましょう。爪が折れやすくなる傾向があるため、爪切りはヤスリ中心のケアに切り替えます。こまめに爪先をチェックし、早め早めに対処しましょう。

:梅雨や猛暑で散歩や運動が不足しがちです。退屈によるストレスが溜まりやすいので、室内遊びのバリエーションを用意し、日課に組み込みましょう。草むらでの小さな外傷や、花粉・ダニによる皮膚トラブルにも注意が必要です。夏場の散歩後はいつも以上に丁寧に足を洗浄・乾燥し、トラブルを防ぎましょう。

:空気が乾燥するため、肉球のひび割れや皮膚の痒みが増えがちです。肉球の保湿ケアと室内の加湿、寒さ対策をしっかり行いましょう。道路に撒かれる融雪剤(いわゆる塩)が肉球を刺激することがあります。冬の散歩後は足を洗って、薬剤をきちんと洗い流し拭き取りましょう。

7. まとめ

inu-tsumekamu-8

まず、判断のポイントは「頻度」「同じ部位か」「傷の有無」です。何度も繰り返している、または傷ができている場合はすぐに介入しましょう。


そして原因は「行動面」と「身体面」に大別されます。観察して原因を特定し、環境調整・行動対策・必要に応じて医療介入という順番で対処します。

そのために今すぐできる小さな対策をコツコツ積み上げていきましょう。

エリザベスカラーや靴下といった物理的な保護は短期間だけ上手に使い、クセ付けには利用しすぎないようにします。季節や年齢に合わせた予防ルーティンも実践して、愛犬が爪を噛む原因そのものを先回りして潰していきましょう。

また判断基準として出血・腫れ・痛み・跛行・悪臭・同じ箇所ばかり噛む——これらは受診すべき赤信号です。迷わず動物病院で相談しましょう。

たった5分の工夫からでも、大きく変えていけます。飼い主さんの観察力と小さな工夫が、愛犬の毎日をきっとぐっと楽にしてくれます。

参考文献:
American Kennel Club – How to Trim Your Dog’s Nails Safely
American Kennel Club – Hot Spots on Dogs (Acute Moist Dermatitis)

View all
author
PetFriends.jp店長 篠本/ペットフード販売士
author https://petfriends.jp

愛犬歴:30年 シーズー:RAN、チワワ:風斗、礼音、柚。 ロードバイクが趣味でアメリカ横断など世界を自転車で旅するのが趣味です。

ブログに戻る